今回は、SEO集客に成功されている英語学習サイト「トイグル」の運営者、田邉竜彦さんにインタビューさせていただきました。
インタビューでは、
- SEOや品質維持のため具体的なノウハウ
- コロナ時代のコンテンツマーケティングに対するご意見
など、「これからオウンドメディアやコンテンツメディアを立ち上げたい」という方にとって、非常に有益な情報を伺うことができました。ぜひ参考にしてください。
田邉さんのご紹介
今回インタビューさせていただいたのは、英語学習サイト「トイグル」を立ち上げられた、田邉竜彦さんです。
田邉さんは、サイト運営だけでなく、マンツーマンのオンライン形式で、英語勉強法やTOEICの学習指導もされています。
「トイグル」について
まずは、トイグルの事業内容や実績をご紹介します。そして、田邉さんがトイグルを始められたきっかけ、SEOを意識したオウンドメディアでの集客を考えた背景を伺いました。
事業内容と集客実績
現在のトイグルの事業内容は次の通りです。
- 英語教育事業(一番の柱)
- 社会人向けマンツーマンのオンラインレッスン(英語やTOEIC勉強法の指導)
- 貸し会議室を利用した少人数制のセミナー
- 期間限定のオンライン講座
サイト運営だけでなく、幅広く活動されています。
事業のメインとなる英語教育のオウンドメディア、トイグルの実績は次の通りです。
- 過去最大69万PV/月
- 月平均40万~50万PV
SEO集客に成功されていることがわかります。
その流入経路は、90%以上がYahooやGoogleなどの検索エンジンからだと言います。最初からSEOを狙って集客対策されていたのでしょうか?
田邉さん「はじめからSEOは相当意識していました。時期を見て、広告を出したり他のソーシャルメディアに広げたりすることも当然検討していましたが、最初は検索でしっかりと成果を出したいと思っていました。」
トイグルを始めたきっかけ
田邉さんがトイグルを始めたきっかけは、自身が留学をして、英語学習の楽しさを感じ、その楽しさを日本で広めたいと考えたからでした。
また、英語学習事業を考えた当初から、オウンドメディアを集客の方法として検討されていたと言います。
田邉さん「私はアメリカとイギリスに社会人留学しました。そこでの英語の勉強が非常に楽しく、『日本に帰ったら、より多くの日本人に、英語を勉強する楽しさを知ってほしい』と思い、英語学習系の事業を開始しようと考えました。」
「そう思った時から、情報発信や集客手段として検討していたのがオウンドメディアです。当時はまだオウンドメディアという概念がなく、ブログなどで個人が断片的に情報発信している状態でした。そのなかで、『なるべく英語勉強法に関する体系的な知識を出したい』と考えて、スタートしました。」
検索エンジンマーケティング(SEO)を採用した背景
田邉さんがあえて検索エンジンマーケティングを選んだ背景には、検索エンジンの特性がありました。
田邉さん「検索するユーザーはそのキーワードに対して興味関心がある、すなわち、集客において有効ではないか?と考えたのが1つです。例えば、『TOEICスコア 上がらない』と調べる方は、TOEICに関して非常に強い関心を持っていると考えられます。なので、集客をする上でまず検索エンジン対策は必須かと考えました。」
トイグル制作の具体的なノウハウ
オウンドメディアを使ったコンテンツマーケティングで大きな成果を出されている田邉さん。ここからは田邉さんが記事作成で実践されている、具体的なノウハウを伺います。
SEOにおいて意識していること
SEOにおいて、田邉さんは検索キーワードから、
- 潜在的ニーズ
- 顕在的ニーズ
の2つを読みとり、それに応えるコンテンツづくりをすることが大切だと言います。
田邉さん「(SEOで注意している点は)キーワードに対して、検索ユーザーが求めているであろう一番の答えを出すことです。」
「例えば『TOEIC 勉強法』で検索するユーザーは、これからTOEICを勉強したい方や、既にTOEICの勉強している方が『何か良い勉強法がないかな?』と検索することがほとんどだと思います。
ただ『TOEIC 勉強法』で調べる潜在的なニーズは、単に勉強という方法論だけではありません。『TOEICのスコアを上げたい』『スコアを上げるための勉強法を知りたい』と思っているはずなのです。
なので“勉強法”については、“スコアが上がる方法”という潜在的なテーマに対して記事を書きます。」
「各検索キーワードの、潜在的ニーズと顕在的ニーズの両方を満たすことが重要だと思っています。」
検索意図の調べ方
“ユーザーの検索意図を満たす”という点に注力。その検索意図は、
- 自分自身でペルソナを考えること
- Googleのサジェストを見ること
で把握されているようです。
田邉さん「(検索意図を把握する方法の)1つは、その検索キーワードに対して、自分自身で考えることです。『TOEIC 勉強法』というキーワードがあったとして、どういう人たちがどういう目的で検索するのか、ペルソナを考えます。
また、ツールなどを使用することもできます。例えば、Googleで『TOEIC 勉強法』と入れて、さらにスペースを入れると『TOEIC 勉強法 おすすめ』や『TOEIC 勉強法 初心者』など、関連するキーワードが出てきます。
そこから『このキーワードは初心者の方が多く検索しているのかな』とか『こういったニーズがあるかもしれない』と考えています。」
記事作成における工程と工数割り
続いて、記事作成にかける時間についてお伺いしました。
田邉さん「1つの記事を書くのに、平均して15時間前後の時間をかけています。ものによってはそれ以上にかかり、最大で1記事書くのに1年かかったのもありました。」
1記事に1年とは、とても長いように感じますよね。一体どのような記事なのでしょうか?
田邉さん「TOEICの頻出語彙1000語をまとめた記事です。
その記事を作るために、今までのTOEICの公式問題を全て研究したり、イチから全部自分で考え直したりと、すべてオリジナルの工程で作ったので1年かかりました。」
参考 絶対に覚えたい!TOEIC頻出単語1,000語まとめトイグル
「この記事には反響を多くいただき、『非常に役に立った』と言ってくださる方がいらっしゃいました。本当に私としてもやりがいがあり、書いて良かったと思っています。」
平均で“1記事書くのに15時間ほどかける”とおっしゃっていましたね。その時間の割り振りを伺うと、企画と構成作りにかける時間の割合が大きいことがわかりました。
田邉さん「リサーチ、どういった記事を書くか研究する時間が、約10時間です。そして実際に執筆をするのが5時間ですね。
私のメディアで扱うのは英語勉強法なので、内容だけではなく英語の例文もたくさん載せたいと思います。1つ1つきちんとした例文を作るのに時間を使っています。」
記事のテーマを選ぶ基準
トイグルは。大きく3つのカテゴリに分かれています。田邉さんが記事のテーマを選ぶ際は、各カテゴリを小分けにしたテーマを意識されていると言います。
田邉さん「私のメディアには、大きく3つのカテゴリがあります。英語勉強法、TOEIC勉強法、そして英文法です。
このように大きなカテゴリがあって、それぞれのカテゴリにあった、必要な情報をテーマとして選んでいます。
例えば、TOEIC勉強法であれば、“単語”、“リスニング”、“リーディング”などの中程度のカテゴリがあります。さらに“リーディング”カテゴリでは、“長文対策”や“短文対策”など、テーマを小分けにします。」
リライトについて
続いては、リライトについて伺いました。
田邉さんがリライトをする際は、部分的な修正ではなく、全面的に書き換えることが多いそうです。そこには、長年オウンドメディアを作られているからこその理由がありました。
田邉さん「私がリライトする場合は、全面的に書き換えることが多いです。
というのも、オウンドメディアを作っていけばいくほど、過去の記事に対して『この記事はこうしたほうがいいな』とか、新しい記事を書いたことによって『こっちの記事はいらないな』といったことが出てくるからです。
なので、リライトする際は、部分的に加筆するだけで終わることがあまりありません。全面的に書き換えて、そのテーマに沿ったより良い記事を作るようにしています。」
実際に書き換えようと思う基準はあるのでしょうか?
田邉さん「1つは、内容の深さや品質です。どうしても昔の記事は、考察が甘かったり、内容が浅かったりすることが多いです。そのような記事を発見した場合は、できるだけ書き直すようにしています。」
ファンをつくるためのコンテンツマーケティング
事業を考え始めた頃からオウンドメディアを作ることを考えられていた田邉さん。続いては、コンテンツマーケティングに注目した理由や成功させるための工夫を伺いました。
コンテンツマーケティングを採用した背景
あえてコンテンツマーケティングでスタートした背景には、「ファンを作りたかった」という田邉さんの意図がありました。
トイグルを始められるまで英語事業の経験がなかった田邉さんは、良いコンテンツをつくることで、ユーザーとの信頼を構築し、サイトのファンになってもらうことを目指したのです。
田邉さん「ファンを作ることができるのが、コンテンツマーケティングの強みだと思っています。
私の想像するお客様は、主に社会人の方で、英語に関心があって、英語の勉強法について調べられている方です。その方たちがスマートフォンやパソコンで検索して、私のサイトが出てきた時に、『なかなか良いこと書いていて面白そうだな。もっと読んでみよう』と思うと、繰り返して読んでもらえます。そのうちに『このサイトはすごく信頼できる』と、ファンになってもらうことができるのです。」
「私の場合、トイグルを始める前に英語関連のことはしておらず、実績も知名度もゼロでした。その状態でランディングページを作って集客をしようとしても、なかなか難しいのではないかと考えました。
ならば、少し時間をかけてでもしっかりとしたコンテンツをつくって、私自身の信頼や実績を作り上げていこうと考えた次第です。」
記事を最後まで読んでもらうための工夫
ユーザーに「良いコンテンツだ」と思ってもらい、サイトのファンになってもらうには、しっかり内容を読んでもらうことがポイントになりそうです。
“読ませる”という点において、注意していることはあるのでしょうか?
田邉さん「読みやすい構成にすることが重要だと思っています。
例えば、段落の分け方ですね。特に今はパソコンよりスマートフォンで読まれる方が多いので、1段落が長いと離脱してしまう可能性が高くなります。なので少しでも段落を短くして、歯切れがいい文、スクロールした時に見やすい文を作ることを考えています。」
田邉さん「それから、記事の間に画像を入れることです。
また記事の構成では、目次をしっかり作って、今自分がどこにいるかわかるようにして、なるべく途中で飽きられないように記事を書いているつもりです。」
確かにトイグルの記事には画像での説明もあり、読みやすくなっています。これらの画像やサイトのデザインも、田邉さんがお一人で行われているそうです。
田邉さん「全て私が作っています。画像やグラフがあった方が、読んでいる方もわかりやすいかなと思い、できるだけビジュアル的な表現も1つ1つの記事に入れるようにしています。」
見え方という点では、スマートフォンで見やすいUIになるよう注意していると言います。
田邉さん「ほとんどのサイトがスマートフォン対応の、いわゆるレスポンシブデザインです。それでも文字と文字の間隔や間の取り方によって見づらいサイトになり、私の経験上、離脱してしまう可能性が高くなると思います。
なので、なるべく見た目がきれいなサイトになるように努めています。」
また見え方の確認では、実機だけではなく、紙に印刷されるそうです。
田邉さん「今持っているデバイスで確認し、プリントアウトして読むこともしています。紙に出して、音読をします。
それによって誤字脱字が見つかる他に、『文章の表現的にこうした方がよりわかりやすいかな』とか、『この部分は冗長だから一旦カットしよう』といったものが生まれるんですね。なるべく日本語的にわかりやすいような文章を書くようにしています。」
読了率の考え方
“読ませる”ために、さまざまな工夫をされているんですね。
その結果となる読了率(最後まで読んでもらう率)について伺うと、読了率は重視していないという、少し意外な答えが返ってきました。
田邉さん「必ずしも一度で全部読んでいただく必要はないとは考えています。
というのも、私自身がスマートフォンなりパソコンなりで調べものをしていて、すごくいい記事が出てきた時にも、それをその場で全部読み切るとは限らない。
時間がない場合は、『スクリーンショットしておこう』とか、『URLを自分のメールに送って後で見よう』となることが結構あります。
なので、『しっかりと中身があるだろう』と思われる記事を書けば、必ずしもその場で全部読まれなくてもいいとは思っています。」
オウンドメディアに投資する時間とその理由
読み手を意識して高品質の記事を作られていることがよくわかりますね。このような高品質の記事を制作するにはそれだけで時間がかかりそうです。
田邉さんは、リライトも含め、月に8~10本、週に1~2本の記事を書かれています。
このペースで高品質な記事を書くために、田邉さんは事業の70%以上の時間をかけて、サイトの企画、運営や編集をされていると言います。
驚くのは、教室の運営もトイグルの執筆も、田邉さんがお一人でやられていることです。70%の時間をオウンドメディアに投資する理由は、将来を見据えてのことでした。
田邉さん「私としては出来るだけ将来を見据えて運営をしたいと思っています。
そのため、例えば今から5年後とか10年後、さらにその後でも、トイグルという事業を継続できるように、今は先行投資と言いますか、ちょっと手間をかけてでもしっかりとしたものをつくることが重要かなと思っています。」
オウンドメディア運営での失敗談
現在大きな成果を出されているトイグルですが、これまでに失敗した経験はあるのでしょうか?
田邉さん「本当に山ほどあるんですけれど、一番良くなかったと思うのが、間違った内容の記事をアップしてしまったことです。
英語勉強法や英文法は、学問的に研究されている分野ですので、正しい・間違いといったことはある程度決まっています。それに対して、私自身の理解や研究が浅く、不適切な内容や誤った内容を書いてしまったことがありました。
あとで修正はしますが、誤った情報を書くのは情報発信者として良くないので、非常に大きく反省しています。」
このような経験から、エビデンスを中心に書くようになったと言います。
田邉さん「(対策は)自分の想像で物を書かずに、しっかりとしたエビデンスに基づいたことを中心に書くことですね。その分野に関する教科書や先行研究を読み込んで、その範囲からしっかりと書いていく、といったところになります。」
事業成果が出るまでの期間
オウンドメディアは成果を出すのに時間がかかるイメージがあります。
田邉さんの場合、開始から30記事ほど制作された、約半年後に初めてお客様からお問い合わせがあり、約2年後には軌道に乗ってきたと言います。
コンテンツマーケティングを始める際、中長期的に投資する重要性を理解していても、やはり短期的な売り上げも必要ですよね。
成果が出るまでの半年間、田邉さんはどのように事業を回しておられたのでしょうか?
田邉さん「私の場合、半年~1年ぐらいで少しでも成果が出ればいいかなと思っていました。そして実際に初めてお客様からお声がかかったのは、約半年程度してからだったので、1つの目標は達成できたかと思っています。」
「なので、これから本当にゼロからオウンドメディアを立ち上げる場合でも、半年かそれ以上の時間を見込んでおくと、成果が出てくるんじゃないかなと思います。」
「正直言いますと、その半年間に売上はなかったですね。コンテンツを作ることだけに集中していました。」
今後の事業やトイグルの将来について
続いて、今後の田邉さんの事業やトイグルの方向性を伺いました。
田邉さん「トイグルには、正しい情報を発信するというテーマがあるので、今後もしっかりとしたコンテンツを作っていきたいと考えています。
事業そのものに関しては検討中ですが、今のような英語学習系のビジネスを、引き続きしっかりやっていきたいです。」
現在トイグルではSEO主体の集客をされていますが、今後はSNS、特にTwitterへの参入も考えられているようです。
田邉さん「Twitterはオウンドメディアとは質の異なるものですが、必ずしも相反するものではなく、両立できるものだと思っています。なので、Twitterもしっかり力を入れていきたいです。」最近、YouTubeチャンネルを開設され、動画でのコンテンツマーケティングもはじめられたようです。ぜひこちらの「全脳英語アカデミー-英語は右脳と左脳で学べ!-」も御覧ください。
参考 全脳英語アカデミー-英語は右脳と左脳で学べ!-YouTube
コロナ時代におけるコンテンツマーケティング
最後に、コロナ時代におけるコンテンツマーケティングのあり方について伺いました。
田邉さんは、このコロナ渦で広告が打ちづらいなか、“ファンを持つこと”の重要性を再認識されたそうです。
田邉さん「昨今非常の厳しい社会情勢で、私自身も含めて、なかなかビジネスが厳しいという方は多くいらっしゃると思います。
そのなかで気づいたのは、ファンを持っていることの重要性です。
平時であれば、広告で一見のお客様を獲得することもできます。しかしこういった状況では、積極的に広告を打てるわけではない。そこで、この状況が終わるまで粛々と耐えるためにも、ビジネスをするにはファンが必要だと思いました。
オウンドメディアは、ファンを作るのに非常に重要です。こういったことがあるからこそ、普段からファンを作れるオウンドメディアの重要性を再認識した次第です。」
コロナ渦では、今日明日に成果を出す即効性も求められるかと思います。そのなかで、集客をして事業を成り立たせるには、コンテンツマーケティングを含めて、どのような対策ができるのでしょうか。
田邉さん「コンテンツマーケティングと他の集客方法は同時にできると思っています。なので、小規模の事業者さんにおいては、普段からコンテンツマーケティングでしっかりとしたファンを作りつつ、他の集客の手段も組み合わせることが理想の1つだと考えています。
業態によって集客方法は全く変わるので一概には言えませんが、“コンテンツマーケティングもやり方の1つとして含める”といった形が良いのではないしょうか。」
まとめ
今回は、SEOで成功されている英語学習サイト「トイグル」の運営者、田邉さんとのインタビューをお届けしました。
コンテンツの品質が一番大切、と再認識することができましたね。そして、品質を突き詰めた結果が今のトイグル、そして田邉さんの事業の成功だと思います。
やはりコンテンツマーケティングもマーケティングの一環なので、
- お客様が何を求めているのか
- どのような形でお客様と接点作りしながらファン化してもらうのか
を考えなければビジネスとして成り立たないと再認識しました。
コンテンツマーケティングと言うと、コンテンツSEOという印象が強いかもしれません。しかし、それ以上にお客様が求めているマーケティングの考えがとても重要だということがわかったと思います。
ぜひこのインタビューを参考に、コンテンツSEOを活用したマーケティングのあり方に関して新たな考えを持っていただければ幸いです。