2021年8月、Ted French氏が自身のサイト売却についてツイートをしました。
ツイートによると、10ヶ月かけて制作したWebサイトを6桁の金額で売却し、サイト所有時の収益を含めると、最終的には20万ドルの利益を得たそうです。
ツイートでは、Ted氏がどのようにサイトを作り売却したかを詳しく説明しています。
今回、Ted French氏に許可を頂き、ツイートスレッドを翻訳・編集・転載しました。
キーワード選定の考え方や、コンテンツ作りを加味する上でのジャンルの選び方、Webサイトの育て方などTed氏の実体験で参考にある所があると思います。
SEOやニッチサイトの構築に興味がある方の参考になれば幸いです。
1. ドメインを決める
Ted氏はこのプロジェクトにオークション・ドメイン(中古ドメイン)を使用したとの事。
オークション・ドメインの使用
オークション・ドメインを簡単に説明すると下記の通りです。
今回Ted氏が使用した中古ドメインにも、すでに強力な被リンクが付いていました。
オークションでドメインを購入した場合、ドメインがドロップされることはありません。(ドロップされたドメインでもついている被リンクリンクは残る。)
※被リンク自体は残るものの、その被リンク評価が残留するかは定かではありません。
つまり、オークション・ドメインのSEO上の主な利点は、すでにあるバックリンクだと言います。
Ted氏「これは“グレーハット”か?Googleは、雑誌サイト「The Independent」や他の雑誌サイトにも利益をもたらし続けています。このような雑誌サイトのコンテンツの半分は役に立たない低品質な物が多いのも事実です。しかし、強い被リンクを持っているからこそ、現在でも上位順位を獲得していると、おそらくではありますがそう思います。アフィリエイト系キーワードで彼らと競争することは、権威性が足りないため不可能に近いです。」
つまり、コンテンツの質が低くとも、被リンクがあるが故に上位表示しているケースがあるとTed氏は言います。
Ted氏「SEOに携わった5年間、私が見てきたすべてのGoogleのアップデートは、大手ブランドに利益をもたらしました。さらに、正しく「ホワイトハット」なSEOを行っていても、アップデートの時期になると検索順位を下げてしまうサイトを多く見てきました。」
またTed氏は、すべてのサイトにオークション・ドメイン(中古ドメイン)を使っているわけではなく、別のサイトでは完全新規のドメインで構築しているとの事。
Ted氏「新規ドメインでも成功しますが、 結果が出るまでには多くの時間がかかります。また、適切な被リンク構築計画を立てなければなりません。つまり、中古ドメインは基本的にチートコード(ショートカット)する事なのです。」
ドメインに求めるもの
Ted氏はAhrefsを使って、イギリスの新聞社やNASAなど権威性があるWebサイトから被リンクがあるかを調査した、と言います。
Ted氏「DA(ドメインオーソリティ)やDR(ドメインレート)など、ドメインのパワーを測る外部指標に惑わされてはいけません。それらは単にガイドラインなので、 実際にはサイトが参照している個々のドメインを見る必要があります。」
Ted氏は次の箇所(ドメインレジストラー)でドメイン名を探しています。
大きなリンクグラフを探すのはもちろんですが、リンク先を考える必要があります。
理想はブランドリンクがあるドメインですが、そうでない場合は再構築可能な内部ページを用いてリンク評価を構築する方法です。
更に、Wayback Machineを使ってWebサイトの履歴をチェックします。(過去、スパム行為を行っていないかを確認するため)
今後売却するためには「ブランド力があるドメイン」にするべきとの事。
<例>
- Lifewire.com:ブランド力があるドメイン(ひと目で分かる)
- BigBobsBurgerShackTexas.com:上位表示できても、ドメインにブランド力が無い
また、ドメインの価格に関してもTed氏は下記のようにツイートしています:
「激安オークションドメイン(50~100ドル以下)を買って失敗した人をたくさん見てきました。私は平均して200~1000ドルのドメインを購入しており、この売却したWebサイトのドメインは700ドルほどでした。」
2. ニッチな分野を選ぶ
Ted氏は、最初にドメインを見つけたことでニッチ分野を選ぶことができたと言います。
Ted氏はニッチ分野を決める際、次の3点を重視しています。
Ted氏「私は競争率の低いキーワードを大量に狙っているので、十分な数のコンテンツを持てるかを重視しています。これから、何百もの記事を書くことができるテーマかが重要な要素の1つなのです。たとえ、足の爪切りについてのブログを立てても、10記事しか書けないなんてことは絶対に避けたいのです」
さらに、Webサイトで収益を挙げる手段として、アフィリエイト広告とディスプレイ広告を設置し、Webサイトの主要収益源としました。
3. サイトを再構築する
Ted氏は、古いサイト内の全ページを再構築することが重要で、構造を変更する場合には、古いページをすべて301リダイレクトする、と言います。
Ahrefsの「被リンク数の多いページ」から、質の高い被リンクを受けているページを見つけることができます。
なお、今回Ted氏が利用した中古ドメインは、被リンクの多くがTopページ(ホームページ)に集中していたので、被リンク受け皿の再構築はとても簡単だったそうです。
4. 事前調査を行う
Ted氏は、8~10記事をサイトに掲載しました。取り扱っているテーマが広いサイトだったので、いくつかの異なるサブトピックをテストしたのです。
例えば、ガーデニング分野では、手押し車の記事を3本、芝刈り機の記事を3本、コテの記事を3本アップしました。
Ted氏「数週間様子を見て、1つの記事が有望な兆しを見せ始めたので、そのサブテーマに全力で取り組みました。期待の兆しとは、ターゲットキーワードで最初の数ページ目(20位~40位くらい)にランクインすることです。最初の数ページ目に表示されるということは、そのサイトがGoogleに気に入られているということです。」
この調査でTed氏は、次のツールとプラグインを使用したとの事。
5. キーワード調査を行う
Ted氏は、キーワード調査をKeywords EverywhereやAhrefsなどのツールを使った方法とあわせて、“直感”による抽出も行っているようです。
Ted氏「ツールを使ったとしても、最後は常識に頼ることが重要です。」
Ted氏は10記事を追加した後の初期段階で、数日かけてサイトのキーワード調査を行い、約250記事のアイデア(対策するキーワード案)を得ました。これらを分類すると、次のようなことがわかりました。
情報コンテンツサイトはディスプレイ広告による収益化も欠かせません。
購買欲が高いキーワード、例えば「芝刈り機 おすすめ」などはアフィリエイトを通して収益化できます。
逆に、購買欲はまだ高く無いものの、検索需要がある情報探索系キーワード、例えば「芝刈り機 動かない原因」はWebページ内に設置してあるディスプレイ広告(DN)で収益化することができます。DN広告による収益額はアフィリエイトと比較し少なくはなりますが、上位順位を獲得するのは比較的易しい側面もあります。
また、Ted氏は「おすすめ●●選」や「レビュー●●選」といったランキング記事を単独では掲載しないと言います。そして、コンテンツの価値が低い「おすすめ●●選」のサイトにはGoogleもうんざりしていると。(そういったコンテンツを掲載しているgearhungry.com、kitchenhome.co.ukの流入数を見ると、Googleの評価も見れるとの事)
kitchenhome.co.ukの検索流入(出典:ahrefs)
Ted氏は2020年4月にサイトを立ち上げ、7月まではコンテンツを追加しませんでした。実は同時期にいくつかのサイトを立ち上げましたが、このサイトが最も有望だったので、この1つに注力しました。
6. 内部リンクを構築する
Ted氏のサイトはほぼ同じ内部リンク構造になっているとの事。
以下の例では、1つの収益ページを下部の3~5本の記事ページでサポート(内部リンクを向ける)しています。
2019年のアップデート以降、同じアンカーテキストを2回使うことはない、との事。
Ted氏「そして、各収益ページを互いにリンクし合ったりしました。(省略) いくつかのサポート記事配下にさらにサポート記事を作成し、2階層にしました。」
また、使用するアンカーテキストも非常に重要だと言います。
Ted氏は通常、ターゲットキーワードを含んだアンカーテキストと一般的なアンカーテキストを8:2で使用しています。それぞれの例はこちらの通りです。
- ターゲットとなるアンカーテキスト:「芝刈り機 おすすめ」、「芝刈り機」など
- 一般的なアンカーテキスト:「こちらをクリック」、「さらに詳しくみる」など
アンカーテキストの比率については、「A Complete SEO Guide to Anchor Text Optimization for 2021」が分かりやすい、との事。
参考 A Complete SEO Guide to Anchor Text Optimization for 2022DIGGITY
Ted氏「収益記事同士でリンクさせる場合も、お互いに関連性が高いことが重要です。」
Ted氏は以前、十分に関連性があると考えてリンクした2つの記事が、実際にはGoogleを混乱させたことがありました。その後、リンクを削除すると、両記事の検索順位が戻ったそうです。
Ted氏「いずれにしても、自分でテストして結果を確認できますが、この全体的なポイントは、ランクインさせたいメイン記事をサポートすることです。すべてのサポート記事は関連性があり、自然にメイン記事にリンクするポイントを見つける必要があります。」
7. コンテンツを書く
「正直、たくさんのコンテンツを作成するのは楽しくないですし、興味を持てないテーマのコンテンツを書くのは大変です。もし、自分ですべてのコンテンツを書くのであれば、少しでも興味を持てる領域である必要があります。」とTed氏は言います。
Ted氏は3ヶ月間に250本の記事を作成し、サイトに追加しました。約35~40万ワード(文字数で換算すると約20万文字)を追加したので、1日に3.5~4千ワード(文字数でいうと約2万文字)を書いていることになります。
Ted氏「コンテンツを書き続けるなら、これくらいが限界です…」
追加されたコンテンツはどれも有益性があり、何よりも検索クエリの悩み(検索意図)に完全に答えていました。
質の低いコンテンツなら1日1万ワード(文字数換算、約5万文字)でも書けますが、数ではなく質です。検索クエリに答えたより良いコンテンツを書く事に価値(効果)があるのです。
Ted氏「記事の構成にも気を配っています。私は通常、1つのH1、1つのH2、そしてH3でコンテンツをサブトピックに分解するという原則を守っています。」
8. リンクを構築する
期限が切れたドメイン(中古ドメイン)のメリットは、自分で被リンクを構築する必要がほとんど無いということ。Ted氏は、数ヶ月の間に10数個のリンクを構築しましたが、これは手動でアウトリーチ(リンクビルディング施策)で得たものでした。
具体的な手順は次の通りです。
Ted氏「リンクビルディングはあまり得意でありません。むしろ、嫌いです。過去にForbesやBusiness Insiderなどのサイトから被リンクを獲得したことがありますが、それはきちんとしたコンテンツを作ることで、最終的に自然にリンクされただけです。」
意図的にリンク営業して被リンクを獲得するよりも、自然にリンクしたくなるようなコンテンツや流れを作る事が実は一番重要だ、とも言います。
9. SEOの成果が出始める
Ted氏は7~9月にかけて大量のコンテンツを追加し、10~11月にかけてSEOツールを使って最適化(コンテンツ改善)しました。必要最低限のコンテンツを追加し、その後はスペルチェックなどの改善を行ったのです。
Ted氏「SEOで大変なのは、膨大な作業をしても何ヶ月も結果が出ないことです…」
しかし、作業量と時間の経過と共に、SEOによる成果が徐々に出始めます。このプロジェクトでの収益の推移は次の通りでした。
1~4月までの収入は月平均7,000ドルで、そのほとんどがディスプレイ広告からでした。
サイト構築に取り組んでから10ヶ月経った辺りで、Ted氏はサイト売却することを決めます。一般的に、Webサイトの売却額は月の収益額の25~40倍が相場との事。
重要な5つのポイント
ツイートの最後でTed氏は、重要なポイントを5つ挙げました。
1. 競争率の低いキーワードを選ぶ
Ted氏「競争率が低いキーワードを選ぶことです。「ワイヤレスイヤホン おすすめ」で検索しても上位表示される可能性はゼロです。しかし、「ワイヤレスイヤホン 耳に合わない」などであれば上位表示の可能性があるかもしれません」
2. 情報コンテンツの活用
Ted氏「このサイトは、シンプルな情報コンテンツでその収益の多くを上げました。それら情報系コンテンツは、ディスプレイ広告(アドセンス等)でも収益化できます。単にサイトや収益ページをサポート(SEO評価の下支え)するだけではありません。」
3. “良いコンテンツ”である事
Ted氏「コンテンツそのものが良いものであることが重要です。今回構築したサイトの平均ページ滞在時間が長く(約7分)、多くの人々がコンテンツに目を通し、コメントを残していました。だからこそ、読者の疑問に答える必要があるのです。」
4. トピックに沿った内容である
Ted氏「トピックに沿った内容であること。そして、よりニッチにすること。
数年前までは、1つのWebサイトで異なる複数のジャンルを混在させ、それぞれのキーワードで上位順位を取ることが可能でした。しかし、昨今のアップデートにより、権威性のある巨大なサイトでない限り、この方法は難しくなってきています。私たちが勝てる唯一の方法は、1つの分野に絞り込んでいくことです。」
5. とにかくやってみる
Ted氏「とにかくやってみることです。SEOは分析しすぎるのも良くありません。分析しすぎて何もできず、何の進歩もないまま終わってしまう可能性もあるからです。基本がしっかりしていれば、あとは自分で解決していけばいいのです。」
今回のツイートを読んで
今回は、短期間でSEO成果を出し、サイト売却まで至ったTed氏の事例を紹介しました。
私の見解や意見も書きたいと思います。
コンテンツ制作やキーワード選定に関して
いきなり収益性が高いキーワードを対策するのではなく、需要はあるが競争性が低いキーワードから対策するべきとTed氏はツイートしていました。
すぐにコンバージョンにつながる収益性が高いキーワードは、参入者数も多いことからSEOの難易度も自ずと高まります。
これらレッドオーシャンのキーワード領域に、Webサイトの規模や評価がない段階から参入するのは負け戦をするようなものです。
ですから、キーワードを選定する際は、キーワードの集客や収益性とは別に、上位表示できる可能性も合わせて考慮しなければなりません。
Ted氏は、この「上位表示の可能性」を重視しており、戦略的にキーワードを選定し短期間で上位表示するキーワード数を増やしていったと考えられます。結果、Webサイトを立ち上げて早い段階から、ディスプレイ広告ですでに収益を上げていたそうです。これも、初期段階で競争性が低いブルーオーシャンのキーワードを選定した事により、流入数を獲得できた結果と考えられます。
また、難易度が比較的に易しいKnow系クエリでページを作成し、上位表示させた事で一定の評価を獲得。その後、それらページから最も上位表示したいメインキーワードのページに対して内部リンクを集約させる事で、最終的に難易度が高いキーワードでも上位表示を可能としています。
以上のように、キーワードの競争性や難易度も考慮しながら、戦略的に対策する順番や内部リンクの設計を行う事で、新規サイトであっても短期的に順位上昇ができたと考えられます。
中古ドメインの利用に関して
中古ドメインの利用は、Googleのウェブマスターガイドラインの「リンクプログラム」に抵触する可能性も否定出来ないため、私としては利用を推奨していません。
しかし、現在の検索結果を見る限り、企業ドメインや中古ドメインなど「ドメインに付いている評価」を利用して検索順位を上げているWebサイトをよく目にします。
特に、2020年5月にリリースされたコアアップデート以降、「コンテンツの内容」以上に「誰か発信しているか」をGoogleは重視している傾向にあり、その方針転換に乗る形でドメイン評価を使って順位上昇を図っているWebサイトも存在します。
とわいえ、過去サイトに付与されていた被リンクの評価のみで順位上昇を図る場合、その後の順位維持は、Webサイト評価(ドメイン評価)をゼロから育てる時よりも難易度が高くなると考えられます。
リンク評価の更新が行われた際、コンテンツなど他要素で順位評価の下支えが無い為、一気に順位が下落する可能性も考えられる為です。
長年に渡って上位表示している中古ドメイン利用サイトも存在するため「中古ドメインの利用=短命なSEO施策」とまでは言い切れないのも事実です。
以上、中古ドメインの利用に関しては不確定要素が多く、それ故に想定外の変動も発生する為、中長期で安定した事業向けのWebサイトには利用しないのが得策でしょう。
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以上、Ted氏のツイートを紹介しました。
施策そのものは賛否両論が分かれるものもあるかと思いますが、一つのケーススタディとして大変興味をそそられる内容でした。